WEBデザインにおける人間中心設計とは

公開日:2024/11/20
人間中心設計

インターネットが普及した現代で、人々の身近にあるWEBの見た目に関わる部分として重要となっているのが、WEBデザインです。WEBデザインにもさまざまな設計方法がありますが、昨今注目されている設計手法のひとつが「人間中心設計」です。今回は人間中心設計とは何か、設計のプロセスやメリットとともにまとめて紹介します。WEBデザインを学習中の方は参考にしてください。

人間中心設計とは?

人間中心設計とは、見た目や制作側の都合で設計するのではなく、ユーザー側の利便性を最優先に考えるデザインのことです。英語表記であるHuman Centered Designの頭文字をとって「HCD」とも呼ばれます。

WEBデザインにおける人間中心設計は、サイトやサービスがいかにユーザーが使いやすいものとなるかを重視してデザイン設計を進めることです。ユーザビリティを高めて満足度や製品・サービスのコンバージョン率を高めるためにも重要な要素となっています。

UXとの違い

WEBデザインにおける設計には「UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイン」というものもあり、人間中心設計の考え方と似通っているものと認識する方もいます。

厳密にUXデザインは、ユーザビリティを超えて付加価値の高い体験を設計するもの、そして人間中心設計は利用者の目線に立ってユーザビリティをとことん追求して使いやすいデザインを設計するものとして、それぞれの意味合いには違いがあります

どちらもWEBサイトやWEBサービスを設計する上で重要な要素のため、それぞれの設計を上手に取り入れたコンテンツを制作できるのが望ましいです。

設計のメリット

人間中心設計をWEBデザインに取り入れるのにはいくつかのメリットがあります。まずは、多くのユーザーに利用してもらいやすくなる点です。

ユーザー目線で設計されたデザインは当然ユーザーに最適化されたものであるため、ユーザビリティが高く使いやすいものとなっています。使いやすいサービスを構築できればそれだけ満足度向上にもつなげられて、制作側にも多くの利点があります。

また、ユーザーの負担を減らし作業効率を高められるのも人間中心設計のメリットです。WEBサイトやWEBサービスを利用する場合、ユーザーがいかに楽をして欲しい情報や製品を入手できるかが重要です。

画面が分かりづらい、操作方法が難しいといった問題があるとそれだけでユーザー作業効率も増えてきて、満足度やコンバージョン率も大きく低下してしまいます。

定められた6つの原則

人間中心設計には、国際規格「ISO9241-210:2010」により以下6つの原則が定められています。この原則を意識した上で設計を進めていくことで、利用者の目線に立った質の高いデザインが確立されます。

ユーザー、タスク、環境の明確な理解にもとづいたデザイン

サービスを利用するユーザー、サービス利用目的となるタスク、そしてサービスを利用する状況である環境について明確に理解した上でデザインを進めることが重要という考え方です。ユーザー目線で設計を進める人間中心設計においては、欠けてはならない要素といえます。

デザインや開発にユーザーが参加する

ユーザーテストやフィードバックの実施など、ユーザーが参加できる形を作り、協力してもらいながらデザインと開発を進めていくことを指します。利用者目線で作るといっても、ユーザーがまったく関与しないものはどこかで必ずギャップが生じてしまいます。

開発側とユーザーの認識のズレを直すためにも、リアルなユーザーの視点を反映させることが大切です。

ユーザー中心の評価でデザインを実施・洗練

設計したデザインの作成・改善を、ユーザーを中心として実施していくことです。制作側が考えるものを作るのではなく「ユーザーならばきっとこうしたデザインであってほしい」と利用者目線で考えてデザインをブラッシュアップしていきます

実際のユーザーにデザインを評価してもらえれば、課題もより明確に抽出できて、解決の糸口を発見しやすくなるでしょう。

プロセスの繰り返し

デザインを進めるにあたってのPDCAサイクルを繰り返し実施していくことが重要と定めています。作ったものの評価を受けた後、一度だけ改善すれば終わりではありません。改善したものに対して再度評価を受けて課題を発見、解決を繰り返していくことで、次第に完成度は高まっていきます

PDCAサイクルを何度も回してユーザー満足度を最大限高められるデザインへとアップデートし続けることが大切です。

UXを考慮した設計

人間中心設計は、UXデザインを生み出すためのプロセスでもあることを理解することが重要です。人間中心設計の設計があるからこそ、その先のユーザー体験もより質の高いものになります。

このユーザー体験を考慮に入れた上で、人間中心設計を進めていきましょう。

専門分野の技能や視点を含んだ設計

制作するサービスに応じて、高い技能や視点をもったチームを設計することで、よりよい人間中心設計ができるという考え方です。エンジニアやデザイナー、ディレクターなど、利用者目線で考えられるチームを組んで設計を進めていきましょう

人間中心設計のプロセス

WEBデザインにおいて人間中心設計を進めていくためには、以下4つのプロセスが大切です。それぞれのプロセスを繰り返していきながら、よりよい設計へと改善していきましょう。

利用の状況の把握と明示

利用者目線で作る設計はもちろん大切ですが、実際の利用者の状況を掴むことでよりリアルな意見をデザインへと反映できます。サイトやサービス利用者へのアンケートなどを実施して、利用状況について明示しましょう。

ユーザーと組織の要求事項の明示

把握したユーザーの利用状況をもとに、ユーザーがそのサイトやサービスに何を求めているのかを明示します。ここでは架空のユーザー像となるペルソナを設定した上で定義を進めていくと、より具体的な課題を見つけやすくなります。

この課題がユーザーが求めるもの、つまり要求事項に該当するもののため、この要求事項をもとに以降のプロセスを進めていきます。

設計による解決策の作成

要求事項に基づいて、ユーザーの課題を解決できるプロトタイプを作成します。ペルソナなどを参考に、現状と理想で乖離がある部分を埋めていく設計を進めていきます

WEBデザインにおけるプロトタイプの作成は、社内外の関係者と認識を共有させるためにも重要な工程です。言葉だけでは共有が困難な箇所も、デザインとして反映させれば多くの人に伝えられるようになります。

要求事項に対する設計の評価

プロトタイプの作成後は、実際のユーザーに評価してもらうことが重要です。ユーザビリティテストとして実際にサイトやサービスを操作してもらいながら、ユーザーの声を集めていきます。

この声をもとに、解決策は充分であるか、いまだユーザーの理想とかけ離れている部分がないかギャップを見つけていきます。開発側が確認できなかった新たな課題を発見できれば、その内容をもとにプロセスを一から繰り返していくことで、WEBデザインの制度を高めていくことができます

まとめ

人間中心設計とはどんな手法か、プロセスやメリットとあわせて紹介しました。サイトやサービスの利用者すべてを満足させるプロダクト作りは難しいものですが、誰を対象としたサービスなのか、ユーザーが困っていることは何なのかを意識して設計を進めていくことでユーザー満足度を高められるものにつながるのは確かです。紹介した人間中心設計のプロセスを繰り返し実践していくことで、既存のシステムもさらによいものへアップデートされていきます。人間中心設計を取り入れたデザインで、ユーザーの課題や悩みの最適解を導けるように努めましょう。これからデザインを学ぶ方も、デザイン思考の基盤として人間中心設計を押さえておきましょう。

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