教育訓練給付制度とは「資格を取るための勉強をしたい」「仕事の知識やスキルを高めてキャリアアップしたい」「新しい仕事にチャレンジしたい」という、働く人々のスキルアップを支援するための制度です。うまく活用すれば、資格の習得のために通うスクールの費用が一部給付されるなど、転職やキャリアアップを目指す人にとって金銭的にメリットの大きい制度です。今回はこの教育訓練給付制度について詳しく紹介しますので、給付金の受給を検討している人はぜひ参考にしてください。
教育訓練給付制度の仕組み
教育訓練給付制度とは、働く人々の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的として、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給される制度です。
資格をとるために講座を受講したり、スクールに通ったりするときに教育訓練給付金制度を利用すると、かかった経費の一部が「給付金」という形で支給されます。この給付金は雇用保険から支出されるので、教育訓練機関への負担もありません。
キャリアアップを望む受講生にとっては、給付金がもらえるという金銭的なメリットを受けられ、スクールや通信講座などの教育訓練機関にとっては、受講生の費用負担の軽減のため受講されやすい講座となる、厚生労働大臣の指定機関として広告が可能になり認知度や受講生への安心感につながるといったメリットがあります。受講生の増加が期待でき、教育訓練機関にもよい影響がおよびます。
教育訓練講座の種類
教育訓練講座は、内容やスキルのレベルによって「一般教育訓練」「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」の3つがあります。それぞれの違いを紹介します。
一般教育訓練は、1年以内の短期の一般教育訓練を受講し、修了するとハローワークから教育訓練費用の20%が支給される制度です。在職者と、1年以内の離職者が対象となります。
実用英語技能検定や簿記検定、ITパスポートなど、転職や昇給に際してアピールできる資格の取得も、一般教育訓練のカテゴリーに入ります。支給額の上限は10万円となっています。
特定一般教育訓練は、速やかな再就職と早期のキャリア形成に資する講座について、受講生は支給要件などを満たしていて、ハローワークで支給申請すると、受講修了後、教育訓練費用の40%が支給される制度です。支給額の上限は20万円となっています。
介護職員初任者研修や、バスなどの運転に必須の大型自動車第一種・第二種免許、税理士など、一般教育訓練のなかでもとくに職業の安定につながりやすいものが、特定一般教育訓練に当てはまります。
専門実践教育訓練は、業務独占資格と呼ばれる介護福祉士、美容師、保育士などの国家資格等の取得を目標とする講座やデジタル関係の講座などに限定され、中長期的なキャリア形成を支援するための制度で、指定期間内に修了し、条件を満たすことで教育訓練費用の最大80%が支給される制度です。支給額の上限は、40万円×年数(3年間の講座なら120万円)となっており、3つの訓練の種別の中で金額が一番大きくなっています。
教育訓練給付金の対象になる講座選び
教育訓練講座の対象となる講座は、約16,000講座あります。具体的な講座は、厚生労働省の公式サイトにある教育訓練給付制度の「検索システム」で検索可能です。オンラインで受講できる講座や夜間・土日に受講できる講座もあり、働きながら受講が可能となるので、自分が取りたい資格や受けたい講座がどれにあてはまるかチェックしてみましょう。
また、具体的に「このスクールで勉強したい」と決まっている場合は、スクールに直接問い合わせるのもよいでしょう。教育訓練給付金制度を活用したい場合は、講座の修了後ではなく、受講の申し込みの際に意思表示する必要があります。受講を検討しているものが、教育訓練給付金制度を活用できるものかどうかを、受講前に尋ねておくと安心です。
スクールのほか、通信講座などでも教育訓練給付金制度を活用できるケースもあるので、自分に合った方法で資格取得やキャリアアップを目指せます。
給付金の受給条件と方法
教育訓練給付金を受給したい場合には、給付条件を満たす必要があります。
まず、受講開始日時点で、在職中で雇用保険に加入しているか、離職してから1年以内であることが条件です。ただし、妊娠や出産、育児、疾病、負傷などの理由があって、適用対象期間の延長をしていた場合は、離職してから最大20年以内となっています。
次に、雇用保険の加入期間が1年以上あることも条件です。また、専門実践教育訓練を受講する場合は、2年以上の加入期間であることが条件となっています。条件を満たせば、給付の手続きに進めます。
一般教育訓練では、講座の受講と修了を済ませたのちに、居住地の管轄のハローワークで支給申請します。「修了」となるのは、修了課題で基準点を満たしているなどの認定が必須となるので、途中退学などで修了とならなかった場合には、給付金の支給ができません。
専門実践教育訓練、特定一般教育訓練では、受講を始める前に、ハローワークでの「訓練前キャリアコンサルティング」を含む「受講資格確認」をします。
受講資格確認では、事前に作成した「ジョブ・カード」をもとにキャリアコンサルタントによる訓練前キャリアコンサルティングを受け、その結果をふまえてジョブ・カードを完成させたのちに、受講開始の1か月前までにハローワークで受給資格の確認を受けます。そのあとの流れは一般教育訓練と同じです。
ジョブ・カードとは、いままでのキャリアを振り返り、経験から得たことや活かせる能力・強みなどを整理することで、今後どのようなキャリアを積んでいきたいかを考えるためのツールです。厚生労働省の公式サイトより無料でダウンロードできます。記入例も記載されているので、簡単に作成できます。
このように、専門実践教育訓練、特定一般教育訓練では、受講の前に一連の受講資格確認を踏まえるので、すぐに受講開始とならないので注意が必要です。時間的な余裕をもつためにも、計画的に準備を進めましょう。
給付金を受給したいと考えたときは、まずは給付の条件を満たしているかをチェックし、教育訓練給付制度の「検索システム」で受講したい講座やスクールを探してみましょう。受講後の申請も、自分が住んでいる管轄のハローワークで済ませられるので、申請のために遠方まで出向かないといけないといった手間もなく、気軽に活用できます。
また、2024年2月1日以降の「支給申請」と「受給資格確認」は、電子申請が可能となりました。日中は仕事などでハローワークに出向くことが難しい場合に、電子申請を利用して、簡単に申請できます。
まとめ
今回は教育訓練給付金の制度や、給付金の受給方法について紹介しました。「資格を取得して、将来的に専門的な仕事につきたい」と考えていても、スクールに通う費用の捻出が難しい人や、手出しの費用をできる限りおさえたいという希望をもつ人は多いでしょう。受講に際し、一旦は費用を全額支払うことになりますが、教育訓練給付金制度を活用すれば、ハローワークなどでの申請後、7日以内に給付金が支給されるので、修了後にスピーディーに受け取れるのが嬉しいポイントです。現在では約16,000講座が対象となる教育訓練給付金を上手に活用し、スクールや講座を金銭面で諦めずに済みます。制度を活用して、キャリアアップを目指しましょう。